日本をモデルとした韓国の介護保険制度

そえだ 勝

先日のドイツを受けて、続編です。

・日本よりも、一足遅れて始まった

韓国は日本同様、急速な高齢化による認知症発症者や要介護高齢者の急増のほか、核家族化の進行等もあり、家族による介護が難しくなった現実がありました。そして、高齢者を社会全体で支えていく必要性が生じてきた中、日本から遅れること8年、2008年に韓国版介護保険制度「老人長期療養保険制度」が施行されました。

 韓国では、日本の高齢化スピードを上回る勢いで、それが進行しています。この内閣府の資料は、高齢化率7%「高齢化社会」から14%「高齢社会」への移行期間を示したものです。

出典:内閣府「令和2年版 高齢社会白書」

 なお、内閣府の調査では、日本よりも少子化が進行している韓国においては、2050年前後には、高齢化率で日本を逆転し、韓国が世界一の高齢国家になるとも予測されています。

・韓国も国民全員が被保険者であり、一部現給付がある

日本の介護保険制度の保険者は「市区町村」であり、いわば「地方分権型」の体制であるのに対して、韓国の場合は全国を一律に制度運営する「国民健康保険公団」という、「中央集権型」による体制となっています。

保険料は全国一律になっています。この理由としては、韓国は各市町村間における財政格差が非常に大きいことから、保険料の格差が生じてしまうことを懸念したといわれています。その意味では、日本で各市区町村間の保険料格差が問題視されているところを先読みした制度構築になっているといえるでしょう。

日本の介護保険制度が40歳以上を被保険者にしていることに対し、韓国の老人長期療養保険制度は、公的医療保険の被保険者すべてを老人長期療養保険制度の対象としています。

介護サービスを利用する際の自己負担金比率については、多くの日本人は在宅・施設サービス共に10%に設定(資力により現在は異なる)されているのに対し、韓国の場合は在宅15%、施設20%で日本より自己負担割合を高い設定となっています。

在宅と施設とで、自己負担金に差を設けていることは、日本にも参考になると思います。在宅介護を推進するうえで、一定の有効性が見込まれる可能性があります。

現金給付については、政府が介護を担う家族に対して行うものです。しかし、その対象は、島嶼部や山間僻地等の介護インフラが不足している地域等にの家庭等に限られています。

しかも、1カ月のその支給額は非常に低く、1ヶ月当たりにして、約15,000円程度とされています。これは療養保護士という韓国版ホームヘルパーの月平均賃金に比べて、かなり低い金額です。

・日本に活かせる点

ここでも、ドイツ同様、現金給付について触れてみましたが、韓国の手法では地域性が強過ぎて、そのメリットを享受できる人が極めて限定されるものであります。日本の場合は島嶼部や山間僻地等は、そもそも、家族間も先に振れた「老々介護」や「認認介護」の可能性もあるため、韓国の手法をそのままでは、有効性を発揮しないものと思われます。

しかし日本でも、都市や地方の分け隔てなく考えれば、「家族介護」を担っている家族は少なからず存在するため、やはり、現金支給は一考に値するものと思われます。

また、既述ですが、施設介護の自己負担金を高く、在宅介護のそれを低くしていることは参考になると思います。

団体紹介
政治と介護を紡ぐ会
政治と介護を紡ぐ会
超党派でつくる介護の未来を変える政策集団
2021年10月30日に5人に現役介護職議員が集まり「介護職よ、地方議員を目指せ!」を発刊。
執筆の様子などが新聞で取り上げられ、全国から同じ経験を持つ議員が集まり現場の声を届ける組織づくりを目指すことになる。
翌2022年4月22日に東京で設立イベントを開催し「政治と介護を紡ぐ会」が発足する。
現在全国の現場の声を聞きつつ、政治家志望者の発掘支援を行う。
記事URLをコピーしました